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2006年11月13日

ラックジャー(Rach Gia)――スターバックス!

日本の鉄道を思う
 早朝のカマウ、ザボンやバナナの葉が浮く水面に船着場にはすでに小型のボートが入っていた。ラックジャーに行きたいと言うと、「それに乗れ」と指示される。体を折って船内に入る。

 定員約20名、走り出せばトビウオのように跳ねながらの道中になるに違いないと思わせる。

「何時に出るのかな」と同乗の中年女性に尋ねるが、「知らない」である。分刻みに急ぐ必要のない移動というのは、いつでもいいものである。定時発着する日本の鉄道は、ひょっとすると世界の大多数からすれば異常と無理の極地にあるのかもしれないとも思う。

サービス重視
 カマウ発のボートはときどき意味不明の急停止、右に左に蛇行しながらラックジャーを目指す。
 窓を開けて外を見れば、小船が木材や砂を積めるだけ積み、縦列に連なって対向するのだ。

 激しく揺れる船内を器用に動いてやって来た係に80000ドンを支払う、水とつめたいお絞りを配るくらいのちゃんとした会社である。車掌が個人的に小遣い稼ぎをしたりはしないのだろう。

フーコック島からの船が入る、ラックジャーの港
フーコック島からの船が入る、ラックジャーの港
「80000ドンですね」と渡すとにっこり微笑んでくれた。北部との差異をはっきり感じるのはこういうときなのだ。料金の不当な請求はほとんどないし、それにこのスピードボートを走らせるような「サービス重視」の企業があること自体、北部とは異なる様相を呈していると言える。メコンデルタの端にあって、「豊かな南」のイメージはこうして僕のなかでいよいよ強くなる。

何万本の吸殻
 それにしても皆が皆、川に物を捨てる。タバコの吸殻、お絞りのビニル袋、ジュースを入れてあったビニル袋などなど、気軽にポイである。
 どんなに清楚な少女でも、ジュースをチューッっと吸ったあとは「ポイ!」

 もちろん眉をひそめる者も、咎める者もいない。自然を大切にだとか、リサイクルだとかいう「文明社会」でのみ通用する虚言はここにはない。「メコン川は優しい」と、だから僕は思うのである。優しさとはつまり汚さを呑む度量の大きさを言うのであって、これは人間の場合でも「清濁あわせ呑む」と言葉があるのと似ている。

 すべてを「きれい」「汚い」で分け、後者を拒絶するのはどこか狭量なことなのかもしれない。

 眠りから覚めると、川面の白くなるほど雨の激しく降りこめるラックジャーに到着した。
 船着場は食堂があるだけの、小さなトタン屋根の一棟であった。雨が止むまでとしばらくそこでコーヒーを飲んで細い往来を眺めた。ホーチミン市でよく見る赤とオレンジのかけ合わせのバスが走っている。「あれで市内に行けるかな」と思っても、雨音を聞いていると物憂くなる。僕は勧誘熱心なバイクタクシーを遠く感じながら、しばらくぼんやりしていた。

ヌクマムの入る港町
 ラックジャーはキエンザン(Kien Giang)省の省都である。タイランド湾に面し、最近ではリゾート地としても注目を集めるフーコック(Phu Quoc)島への船が出る。

ヌクマム問屋が並ぶ通り
ヌクマム問屋が並ぶ通り
 潮風がやや冷たく吹き、海洋性の気候というのだろうか、雨が降ってはときどき晴れるということを繰り返す。
 街中には「フーコック島産ヌクマム」の看板を掲げる問屋が数多く並び、大学があるとのことで規模の大きな書店も中心部にある。旧市街には広場があり、それを取り巻く格好で仏領期の2階家が立ち並ぶ。カマウと比べてバイクの量が格段に増える。

「ウェルカァーム」と声だけ明るくて、表情は冷淡な青年に迎えられたホテル。ここを選んだのは、向かいに仏領期風の建物があったからで、こういうものを眺めながら朝夕を過ごすのもいいと思ったのである。

スターバックス!
 早速街を歩く。見つけたのはスターバックスである。日本ではもはや大半の若者の味覚を奴隷化したあのコーヒーショップ。緑の看板が憎らしいほど誇らしげである。
「やっ、ありゃ何だ」と足を止めて眺める。
 ベトナム語で「coffee My」、つまるところ「アメリカのコーヒー」と書いてある。「スターバックス」とは明記されていないから、万が一あのグローバル企業の商標管理に携わるビジネスマンがこの街に来て、それを見たとしても「いやあ、アメリカっぽいコーヒーということだけですから」と逃げられるのだろう。

写真ではわかりにくいが、左から2番目にスターバックスがある
写真ではわかりにくいが、左から2番目にスターバックスがある
 ちなみに僕は入らなかったが、外から見た限り、店は明かりを極限まで落として暗さのなかに妖艶な雰囲気を作り出す、都会のいかがわしいカフェに似る。本家スターバックスのような明るさとは無縁も甚だしい。僕はちょっとした笑いを禁じ得なかった。
 スターバックスは敬遠して、普通のカフェに入って休んだ。

「ねえ、お兄さんよ」
 近くの席から話しかけてくる男がいた。身なりのいい男だ。何の用か。
「……」
「おい――」彼は自分のズボンの前を開け閉めする動作をしてみせた。
 僕のそこが大きく開いていたのだった。優しい人もいるものだ。

廃品回収
 くたびれたデッキチェアに身を沈めてラックジャーを観察する。リヤカーの後ろが自転車になっている廃品回収車がしばしば通過する。
「パフパフー」と幼児の三輪車につけられたクラクションのような音を、運転者は出すのであるが、これは空のペットボトルの口に何かゴム製の器具をかぶせて音を出すようにしているらしい。その音があまりに間が抜けているのと、ベトナムでは珍しくない、サドルでなく後ろの荷台部分に尻を乗せて漕ぐスタイルとが合わさって滑稽味が増す。
「パフパフー」
「パフパフー」

 すれ違う姿もどこかおかしい。荷台には自転車のホイール、大小の瓶、どこかの家から引き剥がしてきたような木材など、多種多様のゴミが満載である。廃品として回収され、金銭に変じ、日本でいうところのリサイクルが小さな小さな個人事業者のレベルで成立するのだ。

 日本だって敗戦後の貧窮した時期にはこういうゴミを集める人々を「バタ屋」と呼んで、その存在を認めていたわけだが、その名残はどうだろう、昨今なら駅でゴミ箱を漁って雑誌類を集める「拾い子」に見るだけだろうか。ベトナムではこうして日本のことを、ことあるごとに考えさせられるのである。「リサイクル」の美名の背後にある、何でも消費して捨ててしまう文化も、そのうちのひとつのなのだ。


ラックジャー宿泊データ
名前:Than Binh
料金:7万ドン
部屋の広さ:四畳半程度でおかしな台形をしている
設備:エアコンなし。扇風機。水シャワーは室内にあるが、トイレは屋外で共同
レセプション:フ?コック島行きの船を案内するなど、旅行会社も兼ねる
一言:このホテルのすぐ近くにおいしいフーティウ屋が出る

(VietnamGuide.com)

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