都会の森
統一会堂から直線に伸びるレユアン(Le Duan)通りの突き当たりには、都会の大森林がある。これが100年以上の歴史を持つ動植物園だ。かつてプレイノコール(森の都)と呼ばれていたサイゴンも、現在は気の毒なくらいの大気汚染で緑が弱々しくも見える。だが、ここでは違う。
自然が一堂に
フランス人植物学者ルイ・ピエールの指揮のもと、1865年に完成したこの動植物園、カンボジア、ラオス、遠くはインドなどからも研究のために植物が運び込まれた他、トラやゾウといったベトナムでも希少種の動物も集められた。天をつく大木に丁寧に記された学名は、フランス人研究者らの熱意を今に伝える。
昔日の日本人
日本がフランス領インドシナに軍隊を進めたのと前後して、日本ではにわか「仏印ブーム」が起こった。当時出版されたある本では、動植物園に触れて、「上野の動物園と比べたら、問題にならないほど小さな規模だ」と述べている。その本によると、当時のゾウは定期的にジャングルに放され、ストレス発散をしていたらしい。
目で見て触って
規模はさほど大きくないが、この動植物園の魅力は動物との距離の近さ。日曜日ともなると地元客で賑わう。特段管理が厳しくないのか、動物に触ったりしても何の咎めもない。街が成長し、都市生活が窮屈になればなるほど、こんな手軽な大自然がありがたくなるのかもしれない。
旅行で、日々の暮らしで喧騒のサイゴンに疲れたら、気軽に訪れてみたい。入場料は8000ドン(約0.5ドル)。