ほんの少し雨が降るだけで、水が屋内に流れ込む――洪水対策で我が家の前の道路がかさ上げされた多くの家庭の状況だ。窮状をあちらこちらに訴えても、返ってくるのは「道路工事は計画に従い行っている」との答えばかり。
ホーチミン市6区バーホム通りに住むチンさんは、こう憤る。「この通りは以前、小さいながらも美しい道路だった。3年ほど前に国はこの道路を拡張し、住民は喜んだ。だがそれだけでなくかさ上げもしたものだから、道路の水が排水溝に流れず、住宅に流れ込むようになった。この地域には路面から1mも低い家が多くあり、特に路地の住宅は大変だ」。
12月23日に通りを実際に訪れると、現在も工事中でアスファルト舗装はなされていないが、目視でも、道路の方が1mほど住宅より高いことがわかる。
バーホム通り194番地に住むオアインさんは、「出入りも大変だし、商売も上がったり。道路は工事ばっかで延々終わらず埃だらけ。うちだけじゃないよ。この辺の多くの家が、お金を出して近くのマンションにバイクを預けてるんだ」とウンザリしたように言う。
オアインさんの夫は、「『道路がよく冠水するのでかさ上げした』と言われたけど、自治体は道路の心配だけで、住宅は水浸しでも構わないってのかい? 通りに面した家はまだいいよ。路地なんか悲惨だ。水がどんどん入ってくるんだから」。そんなオアインさん宅は、自治体の気ままな洪水対策によって、すでに5回のかさ上げ工事を余儀なくされている。
なぜ住宅より1mも高く道路をかさ上げしたのかという声に対し自治体は、ファムフーチ通りを基準にしているためと説明する。また市洪水防止プログラム運営センターの洪水防止室ドー・タン・ロン室長は、「バーホム通りは政府に承認された都市向上事業に属し、当センターはこの事業の承認後に作られたため、何も意見できなかった」と言う。
つまり洪水対策で市人民委員会に助言する立場でありながら、センターは事業実施前に何も意見を出していないということである。また市もより長期的なビジョンを持って、研究していくべきである。計画が常に、実態にそぐうわけではないのだから。