カーマウ省ウーミン県グエンフィック村に住むグエン・ヴァン・キエムさん、70歳。ハイ・サイ・ゴンという愛称で親しまれている彼は、長らくのあいだ自費を投じ、道路を補修している。
村の人々は、ハイさんがここに引っ越してきた当初から、印象的だったと言う。壊れた木の橋を見つければ、斧を抱えて森に分け入り、木を切り出して修理した。
村に舗装道路ができると、人々が安全に行き来できるように、自分の金で道にあいた穴や壊れた橋を補修した。おかげで村に、他の多くの農村で見られるような、でこぼこ道や壊れた橋はなくなった。
その話をハイさんにすると、寝室からブタの貯金箱を持ち出し、「こいつのおかげだよ」と言った。セメントや土砂などの資材を購入する費用のために、ハイさんはバイクタクシーでこのブタを「飼って」いるのである。
10年ほど前から、自宅前の舗装道路が老朽化してきたのを見て、彼は妻と長期計画を話し合った。ハイさんが奉仕活動の費用を負担し、その他の仕事は奥さんが担う。それから彼がバイクタクシーで稼いだ金の一部は、このブタに食べさせられるようになった。
これまでに、ブタの食い扶持を彼が失敬したことは一度もない。「これは全部道路補修のためのお金」ハイさんは真面目な顔で話す。
自分が行く道以外でも、彼は補修する。地域自治体の幹部は、「出張で彼に乗せてもらった時に、カーマウ市郊外で穴ぼこだらけの道を幾つか見た。すると彼はこう言ったんだ。『宝くじでも当たれば、自分が行った道の穴を全部埋められるんだけどな』彼はもちろん本気だ」と言う。
ハイさんによると、でこぼこ道が嫌いになったのは、サイゴンで自動車のドライバーを生業にしていた頃からだった。
「何年もハンドルを握っていて、同僚の事故を何度も見た。道にあいたたったひとつの穴で事故が起きる。そしていつの頃からか、そんな穴やでこぼこ道を見ると、イライラするようになって、何とか塞がなきゃって思うようになったんだ」。
彼はまた新しい計画を持っている。ウーミン県市場の向かいにある橋の迫持台を「こっそり」補修したいと思っているのだ。「もう少しブタを太らせて、二晩もあれば終わるかな。夜の12時頃に半分くらい修理して、翌晩に残りをやる」。
しかし良いことをするのに隠れてする必要もないのでは? そう問うと、「『家で飯を食って他人の世話をやいてる』なんていろいろ言われるからね。冗談だってわかってるけど、私も年だ。そんな言葉を聞けば腹が立つ。だから、避けられることは避けてるんだよ」と話してくれた。