中部クアンナム省チャーミー町に住むタインさんは2006年、植林用に自宅裏の土地2,000?を購入した。
木を植えてしばらくすると、飼い主のわからない牛の群れがやってくるようになった。タインさんがその場にいれば問題ないが、いなければ林に入り込み荒らす。飼い主をつきとめようと牛の群れについて行ったが、存在に気づくと牛は四方八方に逃げてしまう。
彼は心底いらだっていた。植えて間もない木をこんな風に食べられては、投じた資金が水の泡だ。そこで頭をひねりあるアイデアを思いついた。「牛の尻尾を切ってしまえば、飼い主が現れるだろう」
思い立ったら即行動、ある日の朝、1頭の牛が入ってくるのを見た彼は、大きなナイフを手に近付き尻尾を切った。すると思ったとおり飼い主が飛んできた。それは、近所に住むハイさんだった。
尻尾を切られた牛を巡る両者の言い争いは1週間たっても決着がつかなかった。結局地元集落の和解委員会に持ち込まれ、そこでハイさんは尻尾を切った牛の賠償金としてタインさんに240万ドン(約150ドル)支払うよう要求した。
これに対しタインさんは「牛の値段は1頭400万ドン(約250ドル)、なぜ尻尾1本で240万ドンなのか」と訴え、さらに牛が彼の林に与えた損害の賠償を求めた。
ハイさんは、その牛は繁殖牛であり、尻尾を切られ、容姿端麗でなくなれば種付けに影響する。また、尻尾を切られた牛が弱れば肉牛にしなければならなくなり、尻尾だけの問題ではないとし、1頭分を賠償すべきと反論した。
全く話はまとまらず、集落の和解委員会の手に負えなくなったため県の人民裁判所に訴えられ、最終的にタインさんがハイさんに150万ドン(約94ドル)を支払うという判決が言い渡された。