7年前、ある日本人男性が世界一周の旅に出た。自転車を友に彼は現在も旅の道程にあり、10月下旬にフエを通過した。
キタノナナヒコさんが、そのペダルを踏んだのは2001年2月15日のこと。日本一周から旅を始め、およそ2カ月で制覇した。その年の4月半ばにサハリン島へ、その後フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、ルーマニア、ウクライナからロシアへ戻り、西アジアの国々をまわり上海に向かった。
トゥアティエンフエ省の国道1号線を走行中だった彼は、「地球を3分の2回ったところで皆さんに出会えて本当に嬉しい。ベトナムはとても美しく、旅人をこころよく迎えてくれますね」と話した。この時点で出発から2,000日、走行距離にして数万キロ。ホームシックは? と尋ねると、優しく微笑み、財布の中の家族の写真を見せてくれた。
中国を3カ月ほど走り、今年10月15日にベトナム国境の町クアンニン省モンカイに到着した。
最初に印象的だったのは換金業者だそうだ。早朝にもかかわらず、数十人が駆け寄ってきた。他の国では、換金するのに銀行しかないため非常に驚いたという。「国境で両替できるのは便利だね、彼らは英語も上手」と話す。
その後ハノイで数日を過ごし、美しく落ち着いた風景に、ペダルをこぐ彼の足も軽やかになった。ホアンキエム湖や文廟などを訪れ、ハノイに愛着を感じるようになったという。
ベトナムの旅も半分を過ぎ、彼はいつしかベトナム人になっていた。食事や買い物に行けば値切ることを忘れず、料理も何でも食べられるようになった。家の軒先などで寝袋を広げ野宿する日も多い。
ニンビンに深夜着いたときには、お寺の軒下で寝袋を広げた。そんな彼を見たお寺の人が声をかけ、言葉は通じなかったものの親切に寺に一晩泊めてくれ、おみやげにタロ芋を持たせてくれた。
いろいろな景勝地へ自転車を走らせている彼だが、走行中に人々が手を振ってくれることに満ち足りた気持ちになるという。稲を刈る農民も子供達も、興味津々に彼に声をかける。「素晴らしい国ですね」そう彼は言った。