サンニャウ(サンは「狩り」、ニャウは「(酒を)飲む」の意)――この言葉は、ビンフォック省ドンソアイ町の一部の若者によく知られているものだ。
ドンソアイに来ると、ここで働く知人が「飲みに行こう。『狩り』がなんだか教えてやるよ」と誘ってくれた。あまり酒は飲まないのだが、好奇心にかきたてられ、身なりを遊び人風に変えてみた。
フンヴオン通りにあるタニシ料理屋に入り、わざと目立つような位置を選んだ。23時頃になると客が減りだし、店に来る客は様変わり。若者が目に付きはじめ、騒々しくなった。友人は「もうすぐだな。女の子達が俺達をホーチミン市から遊びに来た人だと思うように、話し方や飲み方に気をつけろよ」と促した。
10分後、ボーイが私達の所に来て「隅の丸いテーブルの青い服の女性が、電話番号を知りたいそうですが、どうします?」と話しかけてきた。私が番号をボーイに渡すと、友人は私を引っ張って店から出て、こう言った。「明日おもしろいことがあるよ」。
「狩り」グループの実体は、酒好きで、遊んでいる女性たちだ。飲み屋をぶらぶらまわり、金持ちの家の、若くておもしろい遊びなれた男達を捕まえる。電話番号を教えてもらうと、一番綺麗で口のうまいリーダーが連絡を取り、遊びに誘う。
その夜、私はこんなメールをもらった。「とってもハンサムで気前がいいのね。明日の夜、一緒に飲みに行かない? 美味しいお店を知ってるの!」夜を待たず、翌朝彼女は電話をかけてきた。甘い声で「昨日の青い服の者だけど、今Bazanカフェにいるの。ちょっとお話しましょ」。
カフェには彼女の友人もいた。以前からの知り合いであるかのように、笑顔であいさつし、「友達のホア。ここでちょっとおしゃべりしましょ」と言い、コーヒーが来ないうちに、彼女は話し出した。「私はハイン。働きながら勉強してる。韓国の会社で働いていて、上司に韓国語を勉強させられてるの」。彼女は省の幹部の娘と言い、「家は裕福な方だけど、誰と遊んでもツマンナイ。毎晩、友達と寂しさを紛らわすために遊んでる」。
私も日々の生活に飽き飽きしているように、だらだらと愚痴を言った。「サイゴンももう飽きたよ。だから時々こっちに気晴らしに来るんだ」。2時間近く話をして、私達は夜また会う約束をして別れた。
口紅をひきばっちりと化粧し、挑発するような服装で時間通りにホテルまで迎えに来た彼女は、バイクの後ろに乗って、恋人かのように私にぎゅっと抱きついてきた。「行こっ、友達が待ってるの」。
テーブルには他に3人の着飾った女性がおり、「私の彼女」が仕切り役。飲み会にはルールがあり、名前を知りたい子がいれば、お酒を1杯ご馳走しなければならない。
彼女達は、のどが渇いたラクダのようにグラスを空ける。自己紹介だけで目まいがするほどだったが、友人に助けられた。酒が入り、女性は横でじゃれついてくるようになった。
750mlのボトルを3本も空け、私は穏やかでなくなり、退散しようとお会計した。女の子達はカラオケに行こうとせがみ、慣れている友人は私に「遊ぶぞ! もう少しでハイだ!」とメッセージを送ってきた。
女の子達が選んだカラオケ店は、小道の深く入ったところにあった。ここで4人の女の子は、引き続き飲んで歌った。私は元々、リーダーの青い服の女性の客なので、誰もちょっかいを出してこない。私の友人の周りには、3人の女の子が群がっている。「一気!」と言ってグラスを持つ女の子達。
ちらっと時計を見ると深夜1時近く。サイゴンビール2ケースは全て空いていた。私は部屋のブレーカーを落とし、大声で言った。「終了! 次行くぞ」。みんなが拍手をして同意する。カラオケ店から出ると、4人のうち2人が酔っ払ってしまったので、タクシーをつかまえて帰した。
すると私の彼女が囁いてきた。「帰って休もう。疲れちゃった」。遠慮も何もない言葉に目まいがし「どこに帰るの?」と聞き返した。「他にどこがあるの? どこに行っても2人きりよ」。
身震いがし、酔っ払っているという理由をつけ、次の日また会う約束をして帰った。ホテルに着き、すぐに電話のシムカードを取り外し、次の日の朝早くにホテルも替えた。
ドンソアイのこのようなグループの女性にとって、思う存分食べて飲んだ後、支払ってくれたお礼に一夜を共にするのは普通のことらしい。「私の彼女」のように、勉強もしていて安定した仕事もある女性でも、酒に溺れて男遊びをしている。