チュオン・タン・サン国家主席は3月18日、首相官邸で安倍晋三首相と会談した。
両首脳は、2009年に戦略的パートナーシップが構築されて以降、政治、国防、経済、貿易、投資から人的交流、文化協力、観光、人材開発まで、あらゆる分野で日越関係が大きく進展していることに喜びの意を示し、両国関係をアジアにおける平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップに格上げすることで一致した。
新たな関係の枠組みに基づき両首脳は、両国関係を包括的かつ実質的、深みのあるものへ発展させるための方針、具体策について意見交換を行なった。
政治面で両首脳は、ハイレベル交流の継続、各枠組みや各レベルの協力制度の効果的な展開で一致、安倍首相は、海上法執行能力の向上でベトナムを支援する用意があるとした。
経済面で安倍首相は、ベトナムは引き続きODA政策の最重要パートナーであるとし、工業化、近代化を目指すベトナムを積極的に支援していくと述べた。
両首脳は、今後も貿易、投資協力を強化し、日越協力枠組みにおけるベトナムの工業化戦略の優先工業6分野向けの行動計画の展開、専用工業団地の開発やニントゥアン2原子力発電所建設支援を含め、各合意や大型事業の効果的な展開に向けた協力で一致した。また日本側は、インフラ整備事業でベトナムを支援することも約束している。
両首脳は、農業分野での包括的な協力の促進でも合意し、両国農業省が共同作業グループの設立を決定したことを歓迎、同分野での長期的な協力計画の構築を目指す。
人材開発や科学技術、医療分野の協力促進に関しても意見交換が行なわれ、日本側は重点大学や職業訓練校の向上、ベトナム人看護師・介護福祉士、技能実習生の受入れ拡大を検討することを約束した。
サン国家主席は、日本の高校生のベトナム修学旅行の拡大、テレビ放送やスポーツ、観光での協力強化を目的とした文化・人的交流の枠組み創設に関する日本側の提案を歓迎、ベトナム人のビザ申請手続きの簡素化について協議を進めることを確認した。
両首脳は、地域の平和維持、安定、協力、繁栄に積極的に貢献し、国際法や1982年国連海洋法条約に基づく航海、飛行の自由など、地域の平和、安定、発展を保障することの重要性を強調した。
会談を終え両首脳は、アジアにおける平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップに関する共同声明に署名し、総額約1,200億円の円借款5件の交換公文の署名に立ち会った。対象案件は、南北高速道路建設(ダナン?クアンガイ区間、ホーチミン市?ゾーザイ区間)、ラックフエン国際港建設(道路・橋梁、港湾)、タイビン火力発電所および送電線建設。
また両首脳は、教育訓練省と文部科学省の戦略協力プログラム、保健省と厚生労働省の協力覚書、農業農村開発省と農林水産省の協力に関する議事録など、両国省庁間の協力文書の署名にも立ち会っている。