日本政府が発表した大規模な金融緩和策、また二国間、多国間貿易協定により、ベトナム企業は日本への輸出機会が増すと見られる。ただ専門家は、円の下落で日本に入る商品が割高になるため、自社の輸出戦略を見直すべきだと指摘する。
■日本製機械割安に
在日本ベトナム商務参事官グエン・チュン・ズン氏によると、日本政府の打ち出した経済対策により、日本経済は発展が促され、消費も拡大、生産もこれに続く。ベトナムも、この恩恵に与ることができる。現在日本はベトナムにとって三大輸出市場のひとつで、2012年の輸出額は130億ドルに達している。主な製品は履物、水産物、農産物だ。
ただズン氏は、この経済対策の本質は金融緩和、つまり円安政策であり、「安倍政権に変わってから円は16%下落し、日本へ入る輸入品は割高になっている。外国製品は国産品との競争を強いられる」と言う。
一方で、円安は近年下り坂にあった日本の輸出を促進し、ベトナムは日本から、以前より安く、機械設備を輸入できるようになる。
ベトナム商工会議所ヴー・ティエン・ロック会頭によると、ベトナムと日本の貿易は相互に補完しあう構造で、ベトナムも日本の経済対策の恩恵がある。日本は現在、農産品や繊維製品、履物、加工食品などで大きな輸入超過国だが、ベトナムはこれらで絶対的な競争力を持つ。
「ベトナムが日本に輸出する多くの製品が、日本の強みではない。ほとんどが、日本で生産するにはコストがかかりすぎて、作れないものだ」とロック氏は言う。
日本からベトナムへの投資の波も、日本企業が外国投資や日本への逆輸入をする傾向があるなかで、より明確になると見られる。ただロック氏は、消費の規模がベトナム製品のチャンスを決めるという。円安で日本へ入る輸入品は高くなるが、その値上がり分を打ち消すほど大きな消費規模となれば、ベトナム企業には大きなチャンスとなる。
■景気動向映す繊維業界で注文増
2012年の輸出額19億7,000万ドル、原油に次いで、現在ベトナムから日本への輸出で2位の金額となっている繊維製品は、日本の輸入シェアの6.2%を占める。ベトナム繊維グループのレ・ティエン・チュオン副会長によると、2013年の日本向け輸出は前年比18%増の23億7,000万ドル、ベトナム繊維業界にとって第2の輸出市場になる見通しだ。
ガーメックスサイゴン社レ・クアン・フン会長も、経済対策により日本で購買力が増すことが期待されるため、繊維製品などで輸出を伸ばすチャンスだという。ただ「原料がかなり高級なスポーツ用衣料で、日本からの注文は1モデル5,000?7,000製品、日本を自社にとって不可欠な市場と見るなら忍耐が必要だ」と指摘する。
サイゴン3縫製社は、2012年と比べ注文は少なくとも10%伸びている。「実際にはもっと伸びたはずだが、注文に応えきれないため仕方がない」と同社幹部は言う。現在同社が生産するチノパンの輸出価格は平均で1本13?15ドル、このパンツは日本でよく売れているという。
日本へ輸出している企業によると、日本が経済対策を打ち出すと、特に衣料品などで現地での消費が伸びる傾向があり、繊維業界などが最も早く、その良好なシグナルを受け取る。